かめさんのおはなし

動物たちはある所へ向かってそれぞれ旅をしていました。

中でもかめさんは、周囲のうさぎさんやライオンさんたちからあまりの歩みの遅さにバカにされていました。
なんでそんなことも出来ないの？と言われて、密かに悩んでいたり、
それくらい出来るでしょ？と言われても、ピンと来なかったり。
周囲の動物たちは、かめさんの飲み込みの悪さにイライラしたりハラハラしていました。

中には時々かめさんペースに合わせて併走してくれる優しいおさるさんやぞうさんもいるので、かめさんは決して心細くありませんでした。
かめさん自身も、仲間からのアドバイスを自分に置き換えて考え、密かにその短い足で踏み出す一歩を最大限大きくしようと試みたり、休憩の仕方を工夫したり、目に見えない小さな小さな努力をしていました。

しかし、かめさんは知っています。
どんなに努力したって辿り着かなかったら意味のないことを。
辿り着いてみて、初めて理解されることを。

かめさんの努力なんてたかが知れています。
大きく踏み出せない小さな自分の足、他の動物と比べて動きが遅いことにも気付いていました。

そして、かめさんは自分の強さにも気付いていました。
嵐が来て、他の動物たちは飛ばされてしまう中でもそう簡単には飛ばされませんでした。
雨が吹きすさぶ中でもじわりじわりと進んでいけるのです。

だから、かめさんは自分を信じて一歩一歩短い足を伸ばすのです。

かめさんに許されているのは息絶えるまでのわずかな時間。
辿り着く前に時間切れになってしまうかもしれません。
でも辿り着く前に諦めて歩みを止めてしまえば本当に終わってしまいます。

この一歩を踏み出し続ければ必ず辿り着く。
だから今日も短い足を伸ばすのです。